14-2. 細胞を使った遺伝子の発現機能解析
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遺伝子の機能解析は核酸を細胞に導入して行う
真核細胞への核酸導入は、核酸を細胞に接触させるトランスフェクション法が一般的だが、細胞種や実験目的により別の方法もとられる
1) 導入遺伝子の一過的発現と安定的発現
導入遺伝子の発現方法
トランジェント法(一過的発現法)
導入遺伝子の発現を染色体に組込まれる前(通常48時間以内)に見る
ステーブル法(安定的発現法)
染色体に組込ませた後で見る
組込みDNAの数や組込み場所を制御できないため、複数の試料間での正確な遺伝子発現量の比較は行えず、遺伝子導入は、遺伝子が染色体から常に発現される安定発現細胞株を作製するために行われる
2) レポーターアッセイとその応用:転写系を利用した解析
レポーターアッセイ(レポーター遺伝子解析)
原理
真核細胞で働くプロモーターの下流に酵素遺伝子を挿入したレポータープラスミドベクターを細胞に導入する
細胞内で蓄積したレポーター遺伝子由来酵素の酵素活性からプロモーターの強度が推定できる
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レポーター遺伝子
レポーター遺伝子がつくる酵素は以下のような条件が必要
mRNA量に比例した翻訳量が見られる
mRNAやタンパク質が安定である
酵素量を安定かつ定量的に測定できる
初期の頃使われていたもの
大腸菌のβ-ガラクトシダーゼ(lacZ遺伝子産物. 分解されたX-galの青色を検出)
クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT→アセチル化されたRI標識のクロラムフェニコールを検出する)
現在は主にルシフェラーゼが使われる
植物では大腸菌由来β-グロクロニダーゼ(GUS)が使われる
table: 表14-2 レポーターアッセイに使われる酵素
マーカー酵素名 略語 測定の原理
大腸菌のβ-ガラクトシダーゼ β-gal X-galを分解し、青色に呈色
大腸菌のβ-グルクロニダーゼ GUS X-Glucを分解し、青色に呈色. 他の方法もある
大腸菌(Tn9)のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ CAT 基質をアセチル化する
ホタルなどのルシフェラーゼ - ルシフェリンを酸化し、光を発する
応用
1) プロモーターや、近傍にある転写調節配列の検出
2) 上記配列に結合する転写調節タンパク質の検出や機能解析
3) 転写調節因子cDNAを発現プラスミド(→こちら側のDNAをエフェクタープラスミドという)に挿入し、レポータープラスミドと細胞に共DNA導入させて、転写調節因子の機能解析を行う
4) ワンハイブリッドアッセイ
被験タンパク質のcDNAをDNA結合性転写活性化因子(e.g. Gal4, LexA)のDNA結合領域と融合させた発現ベクターを、レポータープラスミドと同時に細胞に導入する
被験タンパク質中に転写活性化領域があると、「DNA結合性転写活性化因子」が複合体の形で構築され、レポーター遺伝子の発現が上昇する
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5) ツーハイブリッドアッセイ
タンパク質AとBの結合を見る
Aを前述4と同じように既知DNA結合領域と融合させるとともに、Bを既知転写活性化領域(e.g. VP16)と融合させて、2つのハイブリッドタンパク質を作製する
AとBのタンパク質が結合すると、プロモーター上で融合A-融合Bという形のDNA結合性転写活性化タンパク質が再構築され、4と同様にプロモーター活性が上昇する
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ルシフェラーゼアッセイ(ルシフェラーゼ活性の測定)
原理
ルシフェラーゼは基質のルシフェリンを酸素存在下で酸化し、酸化された活性化状態のルシフェリンが光を発する
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酵素源としてのルシフェラーゼは、発光生物であるホタルやウミシイタケに由来するものが使われる
操作の概要(一過的発現で、プロモーター機能を解析する例)
1) ルシフェラーゼレポーターのルシフェラーゼ遺伝子上流に調べようとするプロモーターを連結し、細胞に導入する
2) 48時間後に細胞を集め、抽出液を得る
3) 抽出液を酵素源とし、ルシフェリンと必要成分を用いて酵素反応を行い、光量を測定する
memo: イメージングによる解析
細胞内で遺伝子発現や遺伝子産物の相互作用を画像として解析する様々な方法がある
免疫染色法
古典的
細胞内タンパク質を抗体を使って検出する
蛍光タンパク質(e.g. GFP)の遺伝子を目的タンパク質と融合させたものを細胞内で発現させると、目的のタンパク質の発現や局在をライブイメージとして観察できる
2種類の蛍光タンパク質を用いれば、ごく隣接する2種類の蛍光タンパク質間で蛍光励起エネルギーが伝達されるFRET現象(蛍光共鳴エネルギー移動:fluorescence resonance energy transfer)を利用して、タンパク質結合を細胞内で観察することもできる
FRETはin vitro反応でも様々に使われる